自分に自信を持つ方法ってありますか?―part1

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自信とは自分自身を信じる力のこと

これまでお仕事を通して、たくさんのクライアントの方とお会いしてきましたが、そのお悩みや症状は異なっても、ほとんどの方に共通するのが「自分に自信がない」「何をやっても本当の自信が持てない」というお声でした。

それはご相談に来られるような方に限らず、多くの方が、「自分に本当の自信を持つにはどうしたらいいんだろう?」「自信を持つ方法ってあるのか?」と思われているのではないかと思います。

かくいう私も、本当に長いこと、自分の自信のなさや心の弱さと戦ってきた一人です。

「何をやっても、結局私はダメ」

これが、長い間の私の思い癖でした。

 

自信とは自分自身を信じる力のこと。

自己信頼があり、高い自己肯定感があることですが、具体的には何を信じられるかというと、大きくは2つです。

自分の「価値」を信じられること。

自分の「能力」を信じられること。

自分に自信を持つためには、どうしてもこの2つの力が身についていかないと、本当の意味で信じる力につながっていきません。

1つは、根源的な自分の「価値」に対する安心感、肯定感です。

そして、もう一つが、自分の「能力」や自分の「言動」に対する、謙虚でありながらも健全な自信です。

本当の自信とは・・・

自分自身の「存在価値」に対する安心感

「ありのままの自分」が認められ、受け入れられ、許され、愛されているという肯定感が、土台にあることが大事になります。

その上に、自分の能力とか性格、言動への自信という柱が立って、初めて自信を持った生き方や人生という建物が築かれていくのですね。

ですから、自分に自信が持てないという場合、自分の「価値」にも「能力」にもどちらにも自信が持てないという場合もあるでしょう。

あるいは、能力は客観的には十分あるのに、成果も出して認められてもいるのに、自分に自信が持てないというような場合、自分の「価値」への否定感、不安感が強い可能性が高いです。

あるいは、完璧主義が強すぎて、常に自分の足りないところにばかり目が行ってしまう人も、自信を持ちにくいといえます。

あるいは、自己価値や自己肯定感が低いわけでないけれども、ある時期に大きな失敗や挫折を経験したことで、立ち直れないまま、自信を失ってしまっているような場合もあるでしょう。

そして、他人と較べて、自分の能力が低く思えて自信が持てないという方も多いことと思います。

あなたは、どうでしょうか?

自信を持てない原因として、大きくはこうした5つが考えられますが、あなたの場合は、どこに原因があるでしょうか?

自分に自信が持てるようになるためには、原因となっているものが何であるかを、見極めることが大事です。

なぜなら、その原因によって、アプローチの仕方は異なるからです。

今回から、シリーズで、1 自分の価値が信じられない場合  2 失敗体験、挫折体験から自信を失った場合、3 自分の「能力」に自信がない場合、4 完璧主義が強い場合を取り上げていきながら、それぞれ、どうしていけば自信をもっていくことができるかを考えていかれたらと思います。

第1回は、自分の「価値」が信じられないを取り上げていきたいと思います。

自分の「価値」が信じられない

自分の存在の「価値」への安心感、肯定感がない場合というのは、幼少期に根差しているものも多いです。

両親との関係や兄弟、周囲の人との関係で、十分な承認が得られず、何らかの心の傷を持ち続けていたり、安心や安全を保障されない環境であったりすると、どうしても自分の存在価値に肯定感が持てなくなりがちです。

この場合は、少し時間をかけて、まずは傷ついた心を癒しながら、自分で自分自身を肯定していくプロセスが必要になっていきます。

 

Aさんは、学校の非常勤講師を長年なさっている女性。

とてもまじめで、ご主人とも二人のお子さんとも仲のいいご家族で、お仕事でも誠実さが認められ、趣味の音楽でも、お友達にも恵まれてこられました。

まさに客観的には何不自由なく、家庭も仕事も友人関係にも恵まれた女性として幸せな人生を生きてきた方に見えます。

が、Aさんの口から出てくる言葉は、

「私は自分に自信をもてたことが一度もないんです」

「私は口にこそ出さなかったですけど、生まれてくるべき人間ではないというような思いがずっとありました」

「私を愛してくれる人なんていないとずっと思ってたんですけど、夫と出会って、初めて、ありのままの自分を受け入れてくれた気がして、心が楽になったし、私も生きていていいんだと思えたんですね。でも、その夫が、子どもがまだ小さかった頃、中学時代の同窓会で再会した女性と浮気をしていたことがわかって。ものすごくショックでしたけど、やはり愛していたし、夫もきちんと謝罪して私たちとの暮らしを大切にしてくれたので、これまでがんばってうまくやってきたつもりです。でも、どうしても心の奥底で、夫のしたことが許せず、自分が価値がない人間だからだと思えて苦しくなってしまうんです」とお話をされました。

実は、自分は養女で、一人っ子として育てられてきたことを高校生になって初めて知ったそうです。でも以前から、養母が気性の激しい人だったので、母親の機嫌をいつも伺っていい子であること、見捨てられないように一人で頑張って生き抜かないといけないと思ってきていたそうです。

Aさんの場合は、なぜか小さい頃から「自分の存在価値への不安」があり、「自分は生まれてくるべきじゃなかった」という思いが、何かあるたびにあったとお話をされました。母親の機嫌ひとつで、ひどく怒られたり、口をきいてもらえなくなったりしたことで、お勉強のできるお嬢さんだったようですが、自分の能力を褒めてもらうような経験もなかったため、まさに客観的な能力はあっても、自分への自信の構築には全くならなかったようです。

自分は「存在する価値がないから、愛されない」と思っていたAさんにとって、愛情をまっしぐらに向けてくれたご主人との出会いは、初めて生きる価値も、自分への肯定感も得られた経験であったのです。

ところが、その夫からも一時期の出来事とはいえ、愛を裏切られた経験は、夫への許せなさ以上に、自分は結局価値がないからという自己不信の思いが強まる結果となってしまいました。

Aさんの場合、大きな問題は4つ。

1つは、実の両親に捨てられた「自分は存在する価値がない」という強固なビリーフを修正する必要があること。これには少し時間がかかりました。

幼少期の出来事がきっかけの「存在価値への否定」は根源的な問題でありながら、深層心理下での強いビリーフであるためです。いくつか重要なエピソードをとらえて行いながら、インナーチャイルドワークを通じて、幼い頃の自分への理解や慈しみ、やり直しをさせてあげることがとても大事になります。こうしたことを重ねながら、強固なビリーフを少しずつ緩めていき、「私は存在する価値がある、私は愛されていいんだ。愛される価値がある」という方向へのサポートをしていきました。

2つ目は、養母との関係で、たくさん心が傷つくような経験をしていながら、感情を感じないようにして生きてきたので、頑張っていい子いい人として生きることはできても、自分の本当の感情を感じるということがむずかしく、本当の気持ちを感じたり、表現することに許可が出なくなってしまっていること.。

最初のうちは、自分の感情というものを感じること自体がむずかしく、許可も出せていないので、「感情を感じていいんだ」、「感情を表現していいんだ」という許可を与えることから始めながら、少しずつ感情を感じたり表現することへの抵抗感や恐怖心を和らげながら、ありのままの自分の感情や思いを認め、受け入れ、愛していく作業を進めていきました。

3つ目は、これも大きいのですが、初めてありのままの自分を受け入れてくれた夫が裏切ったこと自体も受け入れられないが、それ以上に「自分が愛される価値がないから、裏切られた」という思い込みが強いこと。夫が一時的にせよ浮気をしたことと、Aさんの存在価値は関係がないということを実感としてわかるようになるのには、こちらも時間を要しました。

愛する人に裏切られる経験は、ただでさえ大きな傷つきを経験するもので、人を信じられなくなってしまうことになりがちです。まずは傷ついた心を十分に感じ、表現し、癒していくことから始めます。

傷ついたまま、人や自分を許すことはむずかしいのです。

でも心が癒え、自分の心を自分自身が十分に理解できるようになると、初めてお互いが完全でない者同士であり、誰もが間違い多く生きてきたのだということに気づけるようになっていきます。

この世に完全な人などおらず、誰もが不完全で、間違いを犯したことなく生きられた人などいないからです。

自分も多くの人に許されてきたことがわかると、自分を傷つけたと思う人に対しても、許許そうとしてもいいのではということが初めて考えられるようになっていきます。何より、人を許せないという憎しみの感情は、その人自身を最も強く害する「心の毒素」でもあるからです。

愛の裏切りは、人をひどく傷つけるのは確かで、簡単に許せるものではないとしても、過去の相手の過ちを何年も何十年も許さず、裁き続けているとしたら、その心もまた悪なのだと知る必要があるのですね。

憎しみを強く長く持ち続けると、どこかで心身の病気が現れてくる原因ともなると言われています。法律にも「時効」というものがあるように、私たちもまた、人生で許せないという思いを、どこかで勇気をもって許していくということが大切になっていくのだと思います。

Aさんの場合も、許せるようになるには時間が必要でした。でも、夫をようやく許せるようになると、本当にAさんの人生は変わっていかれました。たくさんの涙を流されましたが、自分の存在を受け入れられるようになればなるほど、ご主人のご自分への愛もまた信じられるようになっていったのです。

4つ目は、客観的にはできていることはたくさんあるのに、自分でその能力や自分の持っている強みやすばらしさを自分自身が認めていないこと。長年教師としても周囲から評価や信頼を受けていても、趣味の世界でさえ、大きく評価されるような実績を出しても、それを自信に繋げられていないこと。

これは、お話をしながら、自分自身が人に褒められてきたことを書き出したり、自分のできることを見える化したり、自分で自分を認める作業を丁寧にしていくことから始めました。その上で、小さい頃から頑張ってきた自分をAさん自身が認めて褒めてあげられるようなアプローチをとることで、「内なる子ども」と親密で思いやりのある関係を作りながら、様々なやり直しをすることで、ご自分を少しずつ愛することができるようになっていきました。たとえ母親は否定ばかりで褒めてくれなかったとしても、私は私を認めて自分を信じてあげていいんだという自己信頼に繋げていくことができるようになりました。

こうして、Aさんの場合は、時間はかかりましたが、夫を許せるようになり、何より、自分への価値を自分自身が認められるようになって、いい子、いい人をもうやめてもいいんだ、自分らしく生きていいんだと思えるようになっていかれました。

Aさんは、今学校の先生としても、子どもたちを価値ある存在として見られるようになり、これまでやったことがなかったダンスの世界にも強い興味をもって始められました。

自分を信じる力を強めるためには

カウンセリングや心理療法では、傷ついた心を癒すことから始めます。それはとても大事なことですが、自分を信じる力を強めるためには、傷ついた心を癒すだけではなく、信じる心の力を強める作業がとても大事になります。

他の何かを身につける上でも、学習や練習の繰り返しが必要なように、自分を信じる力も、ある種のスキルだと思って、意識して強化していくことがどうしても大事になります。

これには「言葉の力」「思いの力」が大切になります。

アファメーションという自己宣言文、自己肯定文を唱えることは、心理セラピーや自己実現の世界では当たり前に言われていますが、その多くが成功しないのは、心にマイナスの感情や思いがまだたくさんあるのに、「プラスの言葉」だけを入れようとするからです。

プラスの言葉が力を発揮するのは、マイナスの思いや感情がある程度解放されて初めて、抵抗感なく自分の表面意識から潜在意識へと受け入れられるようになっていくのです。

ですから、心がある程度癒されていったなら、今の自分にあった、無理のない言葉、信じる力を身につける言葉を繰返し繰り返し、日々の中で口にしていくことが大切になります。

「何があっても自分を否定しなくていいんだ」

「どんな自分も、今はすべてを許していいんだ」

「自分を信じていいんだ」

「私はありのままの自分を愛していいんだ」

「どんな自分も受け入れていいんだ」

「大丈夫。私はできる」

「私はもっと自分に自信を持っていいんだ」

 

人智を超えた大いなる力や神を信じることができるような方であれば、ノーマン・ヴィンセント・ピールの「積極的考え方の力」で紹介されているような言葉も大きな力を発揮してくれます。

「私は神の御手の中にある」

「私を強めてくださる方のおかげで、私にはすべてが可能です」

「神と共にいれば、私は何でもできる」

 

Aさんも、最初の言葉と2つ目の言葉を繰返し用いられることで、変わっていかれました。

何があってもなくても、自分を否定し続けていた人が、自分を否定しなくていいという許可が出せるようになるだけで、心の空間は、本当に広がっていくからです。

さらに、自分を否定しないだけでなく、許していいんだまで踏み込めたら、心の選択の幅は相当に広がり、自由な自分らしい選択ができるようになっていきます。

自分の存在の価値を認めるには、その原因が深層心理の部分でもあるので、時間がかかるのは確かです。

でも、その時間をかけるだけの価値があることもまた確かなのです。

どうか、あきらめることなく、自分の心と向き合い、自分の価値をどうして否定する自分がいるのかを見つめ、傷ついた心を癒すことから始めましょう。

私たちは決して弱い存在、力のない存在などではありません。本来心の強さをもって生まれてきています。ただ、そこにたどり着くまでには、忍耐強く自分に時間を与えてあげる必要があるだけです。

次回は、挫折や失敗を通じて自信を失ってしまった場合を取り上げてみたいと思いまます。

 

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