グリーフケアとトラウマケア

グリーフケアをさせていただく時、多くののケースで、ある意味でのトラウマケアを行うことになります。

なぜなら、大切な人を喪失するということ自体が、大きな心の傷になるからです。

他にも

大切な方が亡くなった時のその姿自体が、苦しい記憶になっている場合

病気になって死にゆくまでの壮絶なプロセスが、心の傷になっている場合

これまでにも大きな喪失感を経験しており、その傷が癒えていない場合

生育歴にトラウマやいじめを経験していて、そのケアがなされていない場合

鬱や適応障害など、何らかの心理的既往歴があり、心が脆弱になっている場合などがあります。

特に、その大切な方との間で、幼少期のトラウマや過去の傷を抱えている場合は、トラウマケアは不可欠なものになります。

別の記事でもお伝えしたように、幼少期に親から十分な愛情を示されていなかったり、暴言や暴力を受けいていたり、トラウマになるような出来事を抱えていると、どうしてもアンビバレントな感情(愛憎の葛藤)が生まれてしまうからです。

寂しい気持ちもあるのに、許せない気持ちも去らない
わだかまりが消えず、そんな自分も許せないというような葛藤が起きると、複雑な感情や思いがいつまでも続いていく場合があります。

 

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喪失感を癒すために

心がただでさえ弱っているときに、大切な人との辛い記憶に向き合うのは、適切とは言えません。

かといって、その人を辛くさせている記憶をそのままにしていて、本当に心が軽くなることも難しいことでしょう。

こんな時に、その人を辛くさせすぎずに、辛い記憶を緩め、傷ついた心を癒すのには、TFTと言うタッピングを用いることが多いです。

多くの場合、その方を辛くさせている記憶や出来事を取り上げても、TFTはその人を脅かすことがないメソッドといえます。

その方にとって、特に苦しい場面や辛い記憶は、しばらくの間TFTを用いて解消することが多いです。

そして必要であれば、ご自宅でも辛い記憶が蘇ったときに、自分でトントンしていただけるように、1番簡単にできるセルフケアもお伝えもしています。

私の方では過去の記憶を、ご自宅では辛い記憶が蘇ったときに数分トントンしていただく、これをしばらくの間続けていただくと、多くの方が少しずつ心のおだやかさを取り戻していかれます。

そしてその頃になると、本当にその方を辛くさせている喪失感や悲しみ、不安感、孤独感など取り上げても、大丈夫位な心の強さが戻ってきます。

グリーフは、本当に様々な感情がジェットコースターのように現れてきます。

大切な人を失って悲しいのも、寂しいのも当然の感情なので、それ自体を解放しなければいけないとは考えないでいただけたらと思います。

色々な感情が現れても、安心してその感情を感じていただくのが癒しの一歩になるからです。

ただし、

悲しみが過ぎるほどの悲しみ、

寂しさが過ぎるほどの寂しさ、

不安が過ぎるほどの不安感情が強くなりすぎて、ご飯も食べられない、眠ることもできない、体中が重たい、起き上がれない、仕事にも行けないなどの状態が長く続くような場合は、何らかのケアをしてあげたほうが望ましいと言えます。

最低限の生活を脅かすほどに、感情が強い場合はこれを軽減するようなアプローチを図ると、後々楽になっていかれるケースが非常に多いです。

こうした時は、EFTと言う感情を解放するのがとても得意なタッピングを用いることがあります。

このアプローチを用いると、過ぎた感情が解放されていくので、悲しみや喪失感がなくなるわけではないのですが、ご自分を必要以上に苦しめることは少しずつなくなっていくようになります。

トラウマを癒すシンプルな方法

 

それでは、その人を苦しめるトラウマが生育歴のなかにある場合、特に亡くなった方との間に何らかアンビバレントな感情が生じている場合は、どうするのがよいでしょうか。

その方の心の状態がまだ、トラウマを扱うには十分でないときは、急がないことだと思います。
今現在の苦しい感情や思い、現れている症状的なことを癒すことを優先しましょう。

大切な人を失って、混乱期が過ぎ、ある程度安定した生活習慣が取り戻せてきた頃に、ご本人も望まれ、その葛藤が一番のつらさの原因になっていると思われた時は、無理のない範囲からトラウマを取り上げていきます。

その場合でも、やはりTFTを用いながら、心のトゲを抜いていくことから始めると無理がないように思います。

グリーフケアとしても、トラウマケアとしても、その人を大きく脅かさないというのは、本当に大切なことですし、シンプルなのに効果が現れやすいのも特長と言えます。

その後、様子を見ながら、必要であれば、インナーチャイルドワークを行っていくと、少しずつ心の気づきや平安が生まれていくようになることが多いです。

その方との葛藤が癒えてきて、自分がどのような影響を受けてきたのかが見えてきたころ、少しずつ心境の変化が見えてくるようになります。

何か一定のやり方でなければいけないということはありませんが、いずれにしても、急ぐことなく、無理をすることなく、ご自分の心に負荷をかけないところから進めていくことが大事かと思います。

グリーフケアを考える上で、大切な人との間でアンビバレントな感情が強くある場合は、一人で解決をすることが難しい場合も多いので、時期を見て、専門家に相談をすることも検討してみてくださるといいかなと思います。

 

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